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  • 執筆者の写真higouti

風雪のビヴァーク

作業ひと段落。

忙しかった一昨夜から、あの帯状疱疹を彷彿とさせる何ものかが耳の後ろあたりから忍び寄ってくるのを、なんでもないなんでもないと、知らんぷり。

(そろそろ病院行こうかしら…)


松濤明(まつなみ・あきら)の『風雪のビヴァーク』を読んでいる。

山の専門用語はよく分からないが、なんとか調べながら。


若くしてすごい文才。


「雪はあがって北穂の上に皓々と月が照り、第二尾根上部が神秘な青い光に輝いている。そして陰翳の物凄さ……。月の世界はこんなところかとふと思った。風もたえて静かな凍った夜だった。」


その存在は井上靖『氷壁』のヒントになったのだとか。


敢えて誰もやったことのないことを軽々と冒す天才。

初めて「冒険」という字の成り立ちを実感した。


昭和23年12月21日、他人のサポートを受けず、秋に道具や食料を前もって現地に備えておくこともせず、すべての装備を背負って岳友と二人で真冬の槍ヶ岳を焼岳に向かっていった。


予期せぬ悪天候にテントも凍りつき、

険しい北鎌尾根に挑んだところで岳友が滑落。

凄まじい風雪のなかを一歩も進めず。


雪に掘った穴のなかで、凍傷の進んだ手で生きるものの、生きる意味を綴った。


松濤明が28歳でたどり着いたその哲学を書き出してみた。

疲労がやわらぐ。

ぐるぐるまわる。



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