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  • 執筆者の写真higouti

苦しい



知床旅行のアルバムを見ている。

遊覧船に乗船したときのことを思い出している。

併せて今回のニュースに触れると、動悸がする思い。


ぼくが乗った船では、乗客全員が救命胴衣を着用するように義務付けられていた。

そもそも波が高いとすぐ欠航するので、予約しても乗船出来ないかも知れないという認識があった。

それは、ぼくが選んだ業者のHPに、過去の運行実績カレンダー(ヒグマ目撃の記録になっている)があったので、それを見ると割と欠航しているんだなあと。

ぼくの場合、過去のヒグマ目撃データが存在するというのが業者選びの決め手になった。


運行中は他業者の遊覧船が何隻か同じルートを運行していた。

漁船も何隻か見られた。


波は穏やかだったが、名所を眺めるために船が停まると、大きな波に揺られることもあった。

写真を撮るためにずっと立っている人もいたが、基本どこかに掴まっていないと立っていられないようだった。


ふと、地の果てのオホーツクの海で、何かあったら…と何度か思ったのは確か。

それほど船の上から眺める知床は雄大で、人間が容易に寄りかかることもできそうにない「自然」が広がっていた。


ぼくが乗船した業者と、今回事故を起こしてしまった業者は、ウトロの町の同じ通り沿いに並んでいる。

ぼくは事前予約していたが、例えば現地で乗ると決めて、目当ての業者が欠航だったり満席だったりで、3軒目の当該業者だと空席ありですぐに出航するのだったら、なんのためらいもなく乗船したと思う。


今回だって、他の業者がまだシーズン前で運行していなくて、フライング気味に営業しているのならありがたいと思ってしまうかも知れないし、少々の天候でも出航してくれるのなら、「渡りに船」とばかりに乗船していたかも知れない。


観光客には海や船についての予備知識もさほどなかっただろうし、救命胴衣だって特に着けなくていいとなっていたら、着けない人もいただろう。

ましてや、業者の良し悪しなど分かりようもない。


あの海で…あそこで…と思うと、同じ自然に心を奪われた者としてやりきれなく、泣きたくなってしまう。

みなさん、心の底から怖かったと思う。

3mの大波に上下しながら、あの三歳の子が恐怖に耐えていたかと思うと。


ぼくは土産話として、知床の遊覧船を人に勧めてきた。

行くなら是非乗ったほうがいいと。

いまはそれがとても心苦しい。












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