佐田暢子さんの短編集『半夏生(はんげしょう)』(本の泉社刊)の装画を担当させていただいた。
装丁家の石間淳さんからのご指名で、ぼくの過去の絵を使用させてほしい旨連絡をいただいた。
佐田暢子さんは三池に生まれ、東京で教職に就き、帰郷して文筆活動を続けられている。
子どもの頃の記憶の三池闘争に、その後の人生においてもある感触を抱いて暮らしてこられたのだと思う。
誰でも持ち合わせる生まれ育った場所と生活が、ものの見方、感じ方、生きていく方向を示してくれるのだと、作品を拝読してそんなことを感じた。
いくつかの章、映画のように読んだ。
それは、佐田さんの描く登場人物は「実生活者」であるから、映画のように「見る」ことができるのだと思う。
特に『雪の一ト日』に感銘を受けた。
湯気のような、あたたかいもので満たされていた。
それは過剰な加湿ではなく、生活に必要最低限のあたたかさ。
それが沁みた。
石間淳さんとお仕事をご一緒できて本当にうれしい。
扉の裏の「装丁・石間淳、装画・樋口達也」というクレジットを目にして、この上梓を祝福して、二人、佐田暢子さんに花束を渡す役のようで。。。
2021年12月31日、大晦日に発売になる。
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