higouti
ぼくのK2
父が仕事仲間から受け継いだカメラをいじり始めたのは小学4年頃だったか。
アサヒペンタックスK2。
28mmと50mm、あと望遠レンズは200mmだったと思うけど全部単焦点。
フィルム装填、巻き上げ、レンズ交換、絞りとシャッタースピード…いじくり回して自己流に覚えた。
フィルム感度の「ASA」は「アーサ」と読むのだと、それは父が教えてくれた。
「アーサ」はいつの間にか「イソ」になった。
(1983年7月から変わったそう)
中学の写真部のときもずっと使っていた。
望遠レンズであの子を写したりして、部室の暗室で引き伸ばしたり…
それが祟ったのか、ある日突然望遠レンズのケースの底が抜け、200mmレンズはお釈迦になった。
友人は連写もできるキャノンの新型機種を使っていて、何よりズームレンズがうらやましかった。
ぼくのは単焦点レンズで、ぼく自体が被写体に近付いたり遠退いたりしなければならない。
それでも、ビートルズのリンゴもペンタックスの一眼を使っていることを知り、自分をなぐさめた。
その後もK2を使い続けたが、結局軽くて便利なフラッシュ付きのピッカリコニカ(C35)を祖父の家から拝借してからはそれを使うようになり、そのうち写ルンですの時代になり、なんだか高いカメラには興味がいかなくなった。
あの愛機K2はもうボロボロだ。
とにかく子供の頃から使っていたのだから。
あちこちぶつけて真鍮ボディはヘコみ、地金の色が出ている。
カビも生え、ボディの張り革も固くなった。
だから状態のいい中古品でもあれば欲しいような気もする。
今は安いと思う。
昔は高かったんだ。
多分、父は金銭の代わりに受け取ってきたんじゃないかと。
今思うと。
